ニュース

中国の軍拡に甘い報道ステーション

報道ステーション
=平成21年5月5日の番組内容・構成=
こどもの日のコメントとして、古館キャスターが「国が少子化対策というこいのぼりを上げるべき」という意味不明のコメントから始まる。
続いて新型インフルエンザ、核軍縮のニュースなどを取り上げている。

=平成21年5月5日の分析=

少子化対策もそうだが、国際比較の手法がおかしい。新型インフルエンザでは、日本の対策が遅れていることばかりを取り上げているが、予防接種などの面では、世界の方がより遅れている現状にはまったく指摘がない。また、核軍縮のニュースでは、核兵器を1000発以上持とうとしている中国より日本の方が悪い、という印象を与えかねない構成になっている。

オープニングの挨拶
(古館) 「今日はこどもの日です。私、今年、全くこいのぼりを見ませんでした。まあ私の行動範囲っていうのはすごく狭いってこともあるのかもしれませんけれども、そういうこどもの日にですね、今日は今朝からニュース流れていますけれども、調査以来、15歳未満の子どもの数が最も減ったというふうに出てきましてね、まあこれはつくづく、これ、国がですね、もう少子化対策という名のこいのぼりを立てないとダメなんだなっていうのを思いました」

(この報道の問題点)
普段は高齢者対策の要求ばかりを主張しながら、こどもの日になると、「15歳未満の子供の数が減った」と言い出す。「国が少子化対策というこいのぼりを立てないとダメ」というが、「少子化対策というこいのぼり」とは一体何のことかわからない。

新型インフルエンザ関連。帰国ラッシュをむかえた空港での検疫の様子や、病院で診療拒否が起きていることを伝える。

(この報道の問題点)
新型インフルエンザで、病院での診療拒否をあげつらって危機感を煽る古館キャスター。一色コメンテーターは、危機感を煽りすぎることにはあくまで消極的な姿勢だが、古館キャスターに煽られて「愕然とする」「大変なことになる」と答えてしまっている。

(古館) 「一色さん、改めてここ出てきてわかるのはですね、検疫はもちろんですけど、やはりあの、秋以降、ウイルスがどういうふうな形になってくるかっていうことは、いろんな可能性あるわけですから、秋以降の教訓にすべきはやはり、病院の診療体制の整備、これはやっぱり急務ですね」

(一色) 「うーん、今の診療拒否の話ですけどねえ、まだ国内では感染者確認もされてない段階で、病院がこんだけ混乱しているというのは愕然としますよね。まあ秋以降の、この今回の新型インフルエンザが猛威を振るう可能性もゼロではないということと、それから、もっと毒性の強い鳥インフルエンザ、このことも常に頭においていかないといけないんですけど、そういう場合だったら、この診療拒否はどうなるのかなと思うと、怖くなりますよねえ」

(古館) 「そうですね」

(一色) 「ですからこれ、本当に一軒一軒、きちんと厚生労働省が調べてですね、やはりその、どういうふうにしたらいいのか指導したり、対策とったりしていかないと、本当にいざという時、大変なことになると思いますね

麻生総理がドイツでの演説で核軍縮を訴えた。核における世界のこれまでの動きと専門家の解説を交えての構成

(古館) 「次のニュースですけれども、大変興味深い動きが出てきました」→CMへ

(この報道の問題点)
アメリカの動きを絶賛しながら、古館キャスターが日本を非難していくというお得意の構図だ。

(古館) 「この間ですね、オバマ大統領が核軍縮、これを訴えたわけですね。まあ冷戦はとっくに終わってるとはいうものの、アメリカとロシアだけで、まあ一説によれば1万発の核弾頭があると言われてます。米ロが戦略兵器削減でどういうふうに今後、本気で動いていくのかっていうのが1点。それからですね、麻生総理が国際舞台、そこでですね、核軍縮を高らかに訴えたわけですね。まあもしですね、これを本気でやろうというなら、広島、長崎の悲劇を経験している国、日本がどう動いていくのか、よく見る必要があると思います」

ベルリン、日本時間午後5時すぎ
(麻生総理) 「核軍縮を進め、不拡散体制というものを強化することが重要なんだと申し上げております。“核兵器のない世界”を目指すというゴールに歩みを進める」

(この報道の問題点)
麻生首相が「国際舞台で核軍縮を高らかに訴えた」というニュースを導入部にして、ナレーションと識者のコメントで今後日本が「核兵器を検討する可能性がある」という危機感を煽る構成になっている。

(ナレーション) ドイツを訪問中の麻生総理。スピーチで訴えたのは核軍縮だった。きっかけとなったのはこの演説。(4月5日のプラハでのオバマ大統領の演説の映像)核のない世界を訴えたオバマ大統領。核軍縮を急ぐのにはわけがある。冷戦時代、軍拡を競い合い、現在でも世界の核兵器の9割を保有するアメリカとロシア。冷戦後、この両国が結んだ核兵器の削減条約(第1次戦略核兵器削減条約)が今年期限を迎える。先月、ロシアのメドベージェフ大統領との首脳会談では、新たな核軍縮条約を年内に結ぶことで合意した。しかし、アメリカにとっての核の脅威はむしろ高まりつつある。
(4月5日、プラハでのオバマ大統領の「世界的な全面核戦争の危険は消えた。だが核攻撃を受けるリスクは増大している。核を入手した国が増えているからだ」という部分の演説の映像)
オバマ大統領の念頭にある脅威。それは
(4月29日、朝鮮中央テレビが「国連安保理が直ちに謝罪しない限り、核実験と大陸間弾道ミサイル実験を行う」と放送した映像)
ミサイル発射を非難した国連安保理に反発し、核実験の再開をちらつかせる北朝鮮。先月稼動した核燃料工場を大統領自ら視察し、核開発進展をアピールするイラン。NPT、核拡散防止条約では、アメリカやロシアなど5ヶ国だけ(米、英、ロ、仏、中)に核兵器の保有を認めている。しかし、核兵器を保有したインド、パキスタンなどはNPTに加盟しておらず、北朝鮮は脱退宣言をしたままだ。

(名古屋大学大学院・春名幹男教授) 「イランだとか北朝鮮だとか、そういう国々が核兵器を持とうとする動きをですね、抑えたいという気持ちを(オバマ大統領は)強く持っていると思います。アメリカが先頭に立って核軍縮をして、その他の国々に対しても核兵器を持とうとする芽を摘んでいくという努力をしているわけなんです」

(ナレーション) ブッシュ政権時代、核を持つ国と持たない国が対立し、決裂に終わったNPTの再検討会議が来年、5年ぶりに開かれる。オバマ大統領はこれを機に、世界の核拡散の動きを抑え込もうとしているのだ。さらにアメリカにはもう1つ、念頭においている国がある。

(名古屋大学大学院・春名教授) 「中国はアメリカに到達するICBM(大陸間弾道ミサイル)を持っているわけなんですね。中国に対してですね、核兵器の削減圧力を加えるということは、アメリカにとって非常に重要だと思います」

(ナレーション) こうした流れに乗じたのか、日本が核軍縮を訴える背景には台頭する中国への危機感がある

ベルリン、日本時間午後5時すぎ
(麻生総理) 「中国の国防費は20年連続して前年比で2ケタの伸びを示し、その内容は透明性を欠いております」

(この報道の問題点)
中国の主張ばかりに重点を置こうとする報道ステーションの姿勢が感じられる。中国の軍拡については、アメリカだけでなく、世界中が危機意識を持っているにもかかわらず、「日本の批判には道理がない」という中国外務省(外交部)幹部の言葉だけを重視しているかのようだ。

4月27日
(中曽根外務大臣) 「(中国は)核軍備の近代化を進めておりまして、これまで核兵器削減に取り組んできておりません」

(ナレーション) 中国の軍事費は右肩上がりを続け、その実力も飛躍的な進歩を遂げている。日本の批判に中国側は強く反論した。

4月28日
(中国外務省・姜瑜報道局長) 「中国はこれまで核兵器の全面禁止と廃棄を積極的に提唱している。中国の核戦略と核政策は明確で透明。日本の批判は道理がない」

(ナレーション) ここにきて核軍縮を唱え始めた麻生総理。しかし3年前に北朝鮮が核実験を行った直後には、こんな発言をしていた。

(この報道の問題点)
麻生首相が3年前に行った「隣国の核兵器に関して検討する」という言葉を鬼の首を取ったかのように、持ち出している。

2006年10月、衆議院外務委員会
(麻生外務大臣・当時) 「隣の国が(核兵器を)持つというようなことになった時に、一応、そのことに関して検討をするというのもダメ、話もできない、何もしないっていうのはあれなのであって、1つの考え方として、いろいろな議論もしておくというのは大事なことだと」「だんだんだんだん隣がみな(核兵器を)持っていく時に、日本だけ何の検討もされていないというのはいかがなものか」
(ナレーション) 総理就任直後の所信表明演説でも、核軍縮の言葉はなかった。変化の兆しが現れたのは、先月のオバマ大統領の演説からだ。

(名古屋大学大学院・春名教授) 「麻生首相はですね、かつて“日本でも”核兵器保有論議をしてはどうか”というふうに言ったわけなんですけども、やはり国民は乗らなかったと思います。その辺が非常に、一番重要なことじゃないかと。核廃絶に向けてですね、平和を主張するというのがですね、日本の強みだと思います。麻生さんはですね、ぶれないで、やはり核軍縮を地道に実行されるような外交を進めてほしいと思います

(この報道の問題点)
アメリカ寄りのスタンスで有名な安全保障専門家・春名教授のコメントで、「ぶれないで、核軍縮を地道に実行されるような外交を進めて欲しい」という言葉の切り取り。

(古館) 「あの、核拡散、これはもう大変な脅威だと思いますが、それも含めて、アメリカ、日本、それぞれの思惑ってあたりからちょっと聞いてみたいと」

(一色) 「そうですね、アメリカは当然、イラン、それから北朝鮮、またそれからテロ組織、そのあたりにもやっぱり核が渡ることを抑えようという、そういう意識は当然強いでしょうね。日本の場合はまあ、中国をやはりけん制するということはあるでしょう。それからあと、まあ若干、選挙もありますんで、選挙向けということもなくはないかなという気はいたしますけど。ただですね、日本というのはこれまでもずっと長年、この核軍縮については世界に向けて訴え続けてきたということもありますし、オバマ大統領がアメリカは核兵器を使った世界で唯一の国だというのは、逆に言えば、日本はですね、核兵器を使われたことのある世界で唯一の国なわけで、核軍縮への説得力というのを、逆にいえば一番持ってる国なんですよね。ですからまあ日本は今度、来年早々に日本で核軍縮の国際会議を開くってこともありますし、とにかくこの分野の話については、もう前に出て、どんどんどんどんですね、前に出すぎるってことはないと思うんですね。前に出てどんどんやればいいと思いますね」

(この報道の問題点)
●「唯一の被爆国という外交カードが最も有効だ」という主張を繰り返すだけの番組展開だ

(古館) 「そうですね。それで言えば、一色さん、たとえば具体的にね、そういう国際会議を、核軍縮の会議を開く時に、広島かあるいは長崎でやるとか、あるいはそこに、先ほども出てきましたけれども、インド、パキスタン、イスラエル、こういうところを巻き込んでやっていかないと、これはいけないですよねえ」

(一色) 「そうですね。その開催場所は広島とか長崎っていうのは非常にメッセージ性があると思いますね。それからまた来年、来年というか今年の秋ぐらいにはオバマ大統領も来日されるかもしれませんので、そういう時にはやっぱり広島、長崎も訪ねてほしいという気持ちもありますけどね」

(古館) 「今なお、原爆によって病気で苦しんでらっしゃる方もいっぱいいるという、この唯一の被爆国として何をアピールできるかっていうところ、根幹にありますよね」


ZERO
=平成21年5月5日の構成内容=
1日の動きをまとめて伝える24Hの後は、新型インフルエンザ関連で、成田に到着した人たちの声、病院の診療拒否や新たに3人の日本人に感染の疑いが出たことなどを伝えたが、スタジオでのコメントはなし。次は高速道路のUターンラッシュのニュース。続いて板谷由夏のLIFEのコーナーへ。

=平成21年5月5日の分析=
坂本龍一氏のLIFEという特集だけが気になる。過去を問うことなく、現在だけを取り上げているかたちになっているからだ。

板谷由夏によるコーナーLIFE
坂本龍一が北海道で森づくりをしている活動のリポート。

坂本龍一の全国ツアーは、チケット代の一部を森づくりの活動に充てている。間伐していない人工林の木を間伐することで森を再生させるという。先月、坂本が代表を務める団体「more trees」は、下川町など北海道の4町に間伐費用をサポートすることにした。
《活動のしくみ》
坂本側は間伐などの森の再生費用などを提供する。その結果、町は増えた二酸化炭素の吸収分を排出権として坂本側に渡す。その排出権を一般の人に販売することで、次の森づくりの資金に充てる。

(この報道と報道ステーションとの比較)
●「森の再生」を行っている坂本龍一を取り上げるZERO。確かに行動は立派だが、あくまで彼の左翼的言動の過去は問うていない。

(坂本) 「子どもができると、自分の視野が20年、30年とドーンと延びないですか?」

(板谷) 「延びましたね」

(坂本) 「子どもができる前は、せいぜい明日のこととか、来年のこととか。来年…僕なんかもう、本当に明日のことも考えないで朝まで飲んでたりしていたんですからね。でも急に20年とか、(子どもが)生まれたばっかりで、この子が20歳になった時に、このまま行っちゃったらどうなってるんだろうと」

(板谷) 「そうなんです。そういうことばっかり考えます」

(坂本) 「ですよね。それ、自然だと思うんです。それは親のエゴでもあるんだけど、それはとても自然なエゴだし、それがいろんなことを考える、あるいは行動するきっかけになる、大きなきっかけになると思いますね」

(板谷) 「以前はやれることをやろうって、こう漠然と思ってたんだけど、いや、思うだけじゃダメだって、すごくバーって身近にきた。そう、(子どもを産んで)具体的に何かをしなきゃって思いましたね」

(坂本) 「やっぱり子どもが口にする、口に入れるものとか、飲むもの、吸っている空気、着てるものとか、全部環境ですからね。僕らの細胞の1つ1つになっていくわけですから。それが循環しているから、全然、環境問題というは、どこか遠いところにある問題じゃなくて、自分の体の一部の問題なんですよね。だからやっぱり、今からやらないとダメですよ、いろんなことを」

スタジオで
(板谷) 「今回、森を見て、森を歩いてみたんですけど、やはり間伐の大切さっていうのを改めて思いましたね」

(村尾) 「森には大きく分けて自然のままの天然林。これはもちろん大切に守ってかなくちゃいけない一方で、人の手が入った、まあ今日のVTRのような人工林。これには間伐が本当に必要なんですよね。これ、森を再生するための間伐なんですが、実はこの間伐は森以外にもいろんなものが再生できるんですよ。たとえば、二酸化炭素を削減することによって、環境を再生できる。それから、間伐をするためには人を雇わなくちゃいけませんから、人を雇うことによって雇用を再生できる。そしてその人がその地域に住めば、地域も再生できる。だからこれ、間伐、大いにやるべしなんですよね」

(板谷) 「大切なんですね。それから今回、坂本さんとお話していて改めて思ったのはですね、親である私たちがやはり次の世代である子どもたちに残していかなければいけないものがあると。たとえば日本の豊かな四季であるとか、安全な食べものであるとか、その、子どもたちを取り巻く環境をやはり私たちが責任を持って、考えて、行動していかなきゃいけないんだなっていうのを本当に思いましたね」

(村尾) 「だからね、もう今日だけを見ていたらダメなんですよね。明日を見ないと。それは木によって、森によって教えてくれるんでしょうね」

(板谷) 「そうかもしれないですね」
日独首脳会談。

5日、ベルリン、共同会見
(麻生総理) 「(日独首脳会談では)いわゆる銀行の不良資産の処理と、また財政出動を通じた景気刺激策の話をさせていただいきました」

会談で麻生総理は金融危機への対応として、国会で審議中の補正予算案など、大規模な景気対策を打ち出している現状を説明した上で、財政出動を伴う景気の刺激が重要だと訴えた。その上で両首脳は、今後も金融危機克服のために協力していくことで一致した。
ドイツでも感染者が確認されている新型インフルエンザについては、情報交換や感染予防策について、日独で協力を進めていきたいとしている。

横田めぐみさんの両親ら、拉致被害者家族会が、こどもの日の今日、若者の街、渋谷駅前で「拉致問題を風化させてはいけない」と訴えた。

明日午後には日比谷公会堂で拉致問題の早期解決を訴える大規模集会が行われる予定。


<この記事の編集内容および著作の権利については、「テレビ報道を見守る会」に帰属します>

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林道事故は国の責任?

報道ステーション
=平成21年4月13日の分析=
トップニュースは、タイの戒厳令だが、この国際社会の背景についてまったく触れられていない。また、麻生内閣の安心実現社会会議のメンバーについて、検察OBやメディアのトップが入っていることについて、強い異論を述べる内容となっている。さらに、秋田県知事選についての偏向報道、フィリピンのカルデロン家族について、法律上の問題よりも「家族の離散」といった情緒的な問題だけを報道する相変わらずの報道スタンス。社会保障の重要性だけを訴え、「リベラリズムでなければならない」というスタンスが感じられる。

(ニュースの概要)
タイの非常事態宣言についてのニュース。現地の軍とデモ隊の衝突の様子、アピシット首相の声明、軍のスポークスマンの会見、タクシン元首相がCNNのインタビューに応じた際の映像、アセアン首脳会議中止の経緯、大阪外大・赤木攻名誉教授のタイ国内情勢の解説、タクシン派と反タクシン派の対立の解説。

(この報道の問題点)
タイのデモの報道で最も欠けているのが、中国の華僑についての報道。タクシン派と反タクシン派の衝突の背景には、タクシン政権時に進出した中国華僑が、現地のタイ人をあまりにも圧迫したことがあるが、その実態についてはこれまで報道ステーションは、一度も報道していない。「経済危機」(古館)「プミポン国王の高齢化」(一色)という表面的なコメントを出すだけである。リベラルであれば、その国の国益など関係ないという報道スタンスが感じられる。

(古館) 「日本人はじめ、もう観光客の方はやっぱり赤とか、それから黄色のTシャツを着ない方が本当にいいと思います。まあ一色さん、それにしても、アセアンの盟主といわれるタイの根本がやはり揺らいできてますね。」

(一色) 「そうですね。ものごとをこう、街頭で決着つけようというような、これはもう、本当に無法状態ですよね。今年いっぱいがタイがアセアンの議長国なんですね。ですから7月にも外相級の会議がありますし、12月には首脳会談、会議がありますから。だけどこういう状態だったら、これ、僕は混迷が長引くと思いますんで、開けないんじゃないでしょうかね、そういうものも」

(古館) 「そうですね。」

(一色) 「経済も悪いんですね。失業者が増えてますし、頼みの王室も、もう国王が高齢だということで不安があると。ほんと、不安だらけですよね。続くんじゃないでしょうかね。」

(古館) 「あの、本当に経済危機というものがきっかけとして、かなり根深い対立の上に、大きなきっかけになっていると思いますねえ。」

(一色) 「まあ背景としてですね、あるでしょうね。」

(古館) 「あと、一色さんがおっしゃった、プミポン国王のご高齢で、やはり求心力が低下しているということが無秩序の火種を生んでいるということがあるでしょうね。」

(一色) 「そうですね。最後は国王が出ることによって収まるということがよく言われましたけれども、今回はどうなんでしょうかね。」

(古館) 「そうですねえ。まあ観光的な打撃、それからタイという国に投資しているお金がまた出ていってしまう。こういうことも含めて、えらいことですよね、タイという国にとっての損失は。」

(一色) 「赤とか黄色とか、非常にはっきりと2つに分かれちゃうっていうのが、これ、なかなか難しいですよね。本当はその中間帯もいるはずですけれどもね。」

(古館) 「そうですよね。旧富裕層と、それからタクシン派といわれる、まあ貧困対策をやりましたけれども、この新興財閥、これの対立が根深いといわれてるわけですからね。その他の方々がね、いっぱいいるわけですよね。」


(ニュースの概要)
長野県大鹿村の林道で落石、女性1人が死亡。林道ではたびたび落石がありネットなどを設置していたが、事故現場では落石がなく、落石防護ネットは設置されていなかった。というニュース。設置には多額の費用がかかるという。

(この報道の問題点)
「財源を地方に移譲しないから、落石が起きる」というすさまじく飛躍した論理展開。報道ステーションの地方分権(道州制)に対する誘導は、客観的に見て異常であり、「坊主憎けり袈裟まで憎い」という手法を使っている。

(東亜グラウト工業斜面防止プロジェクト・清水明彦理事) 「山の中の道、全体的に防護策の採用事例というのは、非常に少なくなっております。投下できる公共事業のコスト、お金があるかないかの問題が影響してきてるのではないかというふうに考えております」

(ナレーション) 農林水産省が管轄する林道。その維持・管理に関わる費用は、多くを各地自治体が負担し、一部を国が補助する形となっている。一方で国道などに比べて、予算があまりつかないのが実情だ。

(テロップ)
維持管理等への予算(平成21年度)
林道(農水省の管轄)    20億円程度
国道(国交省の管轄)  2200億円程度

(古館) 地方への財源移譲、まあそういった問題をはらんでいる、こういった悲しい事故が起きてしまったわけですが。

税源移譲が出来ていないためにこのような事故が起こった。
=国の政策の責任。と視聴者を誘導している。


(ニュースの概要)
「安心社会実現会議」が発足し、この会議に問題が多いことを指摘

(この報道の問題点)
「安心社会実現会議」で、渡辺恒雄読売新聞社主、武藤敏郎元財務次官、但木敬一前検事総長らが、与謝野財務相の人選で入ったことに、ジャーナリストの世界では、リベラル左派として知られるインサイドラインの歳川隆夫氏に使って批判させる。

(ナレーション) 麻生総理にとっては初めての、直属の有識者会議が立ち上がった。安心社会実現会議。社会保障や財政など、国の基本政策について、中長期的な観点から検討する会議だ。

午後6時半、安心社会実現会議
(麻生総理) 「日本が目指すべきは、安心できる社会ということを申し上げてきている。その道筋というものを明らかにしたい」

(ナレーション) 財界、学会、霞ヶ関、マスコミ等、幅広い分野から選ばれた15人のメンバー。仕掛けたのは与謝野大臣だ。

(テロップ)
与謝野大臣周辺) 「この会議は与謝野さんが総理に作ってあげたものだから、人選も中身も与謝野さんがやっている」

(ナレーション) 座長となった電通の成田豊最高顧問と連合の高木剛会長。それに与謝野氏は、共に東大野球部のマネージャー・先輩・後輩の関係だ。読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長兼主筆は、サラリーマンだった与謝野氏に政界入りを勧めた人物だ。

午後8時半
(渡辺恒雄) 「政局も絡んでいるものだから、僕はジャーナリストだから、両方考えなきゃならない。まじめに考えればねえ、党利党略を離れて考えれば、自民党と民主党が合意することだってできると思うね」

(ナレーション) フジテレビの日枝久会長と共に、メディア界の大物3人が入っている。武藤敏郎元財務次官と但木敬一前検事総長は超大物の霞ヶ関OBで、ともに与謝野氏の強力な官僚人脈だ。

(この報道の問題点)
「霞ヶ関の右代表として、この安心社会実現会議に入った」という歳川氏に発言させ、ここでナレーションを使って「極めて異例」と表現
但木前検事総長がメンバーに入ったことで、歳川氏が「小沢代表を首班とするような政権が、将来、誕生してほしくないという本音が、この人選に表れていると言っても過言ではない」と発言し、あたかも麻生政権が検察と組んでいるかのような印象を与えている。

(インサイドライン・歳川隆雄編集長) 「武藤さんと但木さんはOBでありながら、事実上、霞ヶ関官僚の右代表として、この安心社会実現会議に入ったというふうに見るべきではないかと私は思いますね。現霞ヶ関は、あげて麻生政権を支えると」

(ナレーション) ただ、検察のトップを務めた但木氏は、こうした会議のメンバーになるのは極めて異例だ。

午後8時すぎ、官邸
(記者) 「西松建設の問題で、今、検察と政府の距離感が指摘されているが、こういった中で会合に参加されるというのは?」

(但木前検事総長) 「僕は全く関係がない。現役を退いた人だから事件には全くタッチしていないし」

(歳川) 「私は、検察総体は民主党の小沢代表を首班とするような政権が、将来、誕生してほしくないという本音がね、この人選に表れていると言っても過言ではない」

小沢一郎秘書逮捕が国策捜査であるかのように視聴者を誘導する。

(ナレーション) 今回の人選で、与謝野氏は野党人脈にも手を伸ばしていた。薬害肝炎訴訟を強力にバックアップしてきたのは民主党だ。しかし与謝野氏も、膠着していたC型肝炎問題で、当時の福田総理に和解を進言していた。

民主党=弱い者の味方。との印象を植え付ける。

午後8時すぎ、官邸
(記者の質問) 「参加の声かけは誰から?」

(薬害肝炎全国原告団・山口美智子代表) 「与謝野大臣から直接電話をいただいて、お会いして、内容と趣旨等をお聞きしました」

(ナレーション) 宮本太郎・北海道大学教授は共産党の宮本顕治元議長の長男で、専門は社会保障制度。民主党系の会合で、たびたび講演しているが、与謝野氏の国会答弁の中にも出てくる。

2月24日、衆議院財務金融委員会
(与謝野大臣) 「ぜひ宮本太郎さんという方の本はお読みになった方がいい」

(テロップ)
(与謝野大臣周辺) 「これは麻生ビジョンではなく、与謝野ビジョンなんだ。与謝野さんのマニフェスト作りなんてまた言われちゃうね」

都合よく第3者の麻生批判をするときによく使う手口。
誰が言ったのか問い合わせても取材源の秘匿で答える必要がない。

(ナレーション) 安心社会実現会議が6月までにまとめるビジョンも、野党との違いを際立たせ、次の総選挙で訴える重点政策にする狙いもある。
昨日、投票が行われた秋田県知事選挙のニュース。自民党の推薦候補が、民主党秋田県連の推す候補を破った。千葉県知事選挙に次いで2連勝したことになる。

(この報道の問題点)
秋田県知事選での千葉県知事選に次ぐ民主党の連敗のニュースを取り上げるも、いきなり安心社会実現会議のコメントで、「消費税引き上げがテーマになってくる」について述べる古館キャスターと一色コメンテーター。この構成は明らかに変であり、民主党の劣勢については全く取り上げず、政権への懸念について視聴者の不安を煽るための構成としか見て取れない

今日、午前
(自民党・菅選対副委員長) 「自民党に対してのアレルギーっていうんですかね、そういうのが完全に払拭されたんじゃないかと思うんですよね」

(ナレーション) 一方、民主党は、表向き、小沢代表の進退に影響はないとしている。しかし、

午後3時
(記者) 「小沢代表の問題は影響あると思いますか?

(渡部恒三最高顧問) 「まあ、その点はお答えいたしません!」

(記者) 「総選挙に関しては何か影響があると?」

(渡部) 「これから考えます」

(古館) 「今日の安心会議というね、たいへんなメンバーが揃っている会議ですが、現政権の安定装置というような見方もできると思うんですが、一色さん、どうでしょうね。」

(一色) 「まあ小泉政権の時のブレーンだったような、構造改革至上主義っていうんですかね、そういう方は見当たりませんね。ですからやはり、ものの考え方自体がちょっと舵をきっているのかなと思いますね。つまり与謝野さんの考えが反映されて、競争一辺倒でない、旧来型の自民党政治に近いと、そういう流れのものになっていくんじゃないかなと」

小泉改革に逆行して古い自民党の復活である印象を作り出す

(古館) 「麻生総理の言っている、たとえば中福祉、中負担というような?」

(一色) 「そうですね、そういう流れのことになると思うんですけれど、その場合、もちろん中負担の方で、財源の問題がすごく出てきますから、その場合、当然ですけど、消費税の引き上げっていうことが、その財源の問題の中心のテーマになってきますんで、」

(古館) 「このメンバーを見ると、そういう感じが強くしますね、消費税。」

安心会議=消費税を上げるための会議だと思わせる。

(一色) 「まあ整合性からいうと、そこを強く書かないと、強く打ち出さないといけないと思うんですけれども、本当にそこを強く打ち出せるのか、そしてまた、それを選挙に掲げてですね、マニフェストに掲げて戦うことができるのか、その覚悟が麻生さんにあるのかという、そこがポイントなんだと思うんですけどね。」

(古館) 「解散のカードをチラつかせながらも、いつ選挙をやるのか全くわからないっていうような状況に今ありますよね。」

(一色) 「そうですね。これの結論も6月っていうことですから、本当にその後に選挙があるのか、その前の可能性はゼロなのかと、ここら辺がよくわからないですね。」

(古館) 「まあこの混迷の状況にあって、将来の国家像、近未来の国家像をですね、少子高齢化の中で示すというのは、とってもいいと思うんですけれども、私が引っかかりますのは、やっぱりメンバーですね。まあメディアのトップが入っている、検察のOBが入っている、どちらも政権に対して一定の距離をとらなくてはいけないのではないかというふうなことを強く感じますね。そして一方ですね、薬害肝炎の時に頑張られた山口美智子さんが今回、入られている。こういうような現場の方をもっと入れるべきではないかと思うんですね、この安心会議には。たとえば雇用の問題、派遣村の最前線の現場でやっている湯浅さんであるとか、その他、社会保障の最先端、最前線にいる方ですね、そういうところの方々の意見をじっくり聞くべきではないかなと強く思います。」

(この報道の問題点)
「将来の国家像を少子高齢化の中で示すというのはいいと思うが、メディアと検察は政権に対して一定の距離をとらなくてはいけない。一方、社会保障の最前線にいる現場の方の意見はじっくり聞くべきだ」と古館キャスターが発言。「社会保障の分野ならいいが、検察やメディアはダメだ」という主観的なレッテルを貼っている。

「ちらつかせ、」「全くわからない状況、」「よくわからない、」「混迷の状況、」「引っ掛かります、」などの言葉を使って政府がうまく機能していないとのいかがわしい印象を視聴者に与える。
安心会議のメンバーの人選がおかしい、旧来型の古い政治に戻る、政府が検察やメディアをコントロールしようとしている。
社会保障の最前線の人が入っていない。この会議は弱い者の味方ではありませんよ。といった誘導をしている。


(ニュースの概要)
不法滞在で国外退去を命じられたフィリピン人のカルデロン夫妻が13歳の娘、のり子さんを残し、帰国。今日の家族の様子などの映像を流す。

(この報道の問題点)
テレビ朝日が何度も取り上げるフィリピン人のカルデロン家族の問題のニュースだが、法治国家である日本への不法入国という問題を取り上げず、ナレーションで「親子の離別」という視点だけに意図的に焦点を絞っている。

(ナレーション) 親子の離別という結果になった今回の問題。

先月17日
(森英介法務大臣) 「一家の事情について最大限斟酌いたしまして、まあギリギリのところで、まあ、あのー、適切な判断をしたと」

(ナレーション) 在留特別許可は法務大臣の裁量で決まる。ただし、日本以外の国で今回の問題が発生した場合、違った結論になった可能性があると専門家は指摘する。

(名城大学・近藤敦教授) 「家族の結合の権利を侵害するとして、国際人権規約違反になる恐れが大きいです」

(ナレーション) 国際条約、自由権規約の条文にはこうある。「何人も(略)家族に対して恣意的に若しくは不法に干渉されない」

(近藤教授) 「この種の人権侵害を申し立てることが、個人通報制度という形で選択議定書を批准している締約国の間では申し立てることができるんですが、その条約(議定書)に残念ながらまだ批准しておりませんので、(国連に)個人が通報できないという問題があります」

(ナレーション) 日本はなぜ(111ヶ国が批准している)この国際条約(「選択議定書」)を批准していないのか。外務省の見解はこうだ。「司法の独立という観点をはじめ、わが国の司法制度との関連で、問題が生じる可能性があり、現在、慎重に検討している」

不法入国した外国人が日本国内で子供を作ればその国に留まることができるといった危険をはらんでいる事には触れない。 

(古館) 「ご両親と13歳の娘さんが国を別れて暮らしていく。あのー、皆さん、これをですね、自分の親戚で起きたことと想像しますと、どうでしょうね。法律っていうのは何なのかと思いますね。新しく法律を作る前に、裁量というものがあるのではないかなと、私は感じますね。」

森法務大臣の一時帰国を認めた裁量には全く触れず、情け容赦ない政府である印象を与える。ましてや法治国家の根幹である法律の批判をする。

ZERO
=平成21年4月13日の分析=

(
ニュースの概要)
タイの戒厳令の報道がトップ。アセアン会議での首脳会合が中止になったことへの村尾キャスターの批判的なコメントがある一方で、フィリピンのカルデロン家族の帰国問題については、森法務大臣の「一時的な帰国を認める」という発言を紹介。比較的妥当で国民の目に沿った見方になっている。

タイの非常事態関連。軍と反政府デモ隊との衝突の様子、タクシン派と現政権支持の反タクシン派の対立の構図の説明、アセアン首脳会議中止の経緯、亡命先の海外からタクシン元首相がデモ隊の市民に送ったメッセージの紹介、現地からの現状報告。

(桜井翔) 「G20直後の、世界的不況に立ち向かおうという中、アセアン会議が中止となってしまったのは、アジアにとっては重要な意味があったのではないかなと思いますが。 」

(村尾) 「うーん、これはね、やっぱり痛いと思いますよね。まずアセアンというのは、タイとかフィリピンだとかベトナム、東南アジアの10ヶ国の連合体なんですよね。今、アメリカだとかヨーロッパというのは、アメリカのサブプライムローンの影響を受けて、だいぶ景気が落ち込んでいるんですが、比較的、中国をはじめ、アジアはこれから経済、牽引力として注目されているところでもあるんです。ですからこの場で、アセアンとか中国、そして日本がG20の後を受けて、アジアとしてこれにどう立ち向かうのかというのを話し合う重要な場だったんです。これは世界にとっても重要であると同時に、このアセアンというのは非常に重要な地域で、たとえば日本が工場をつくる、いろいろな投資をしているわけですね。日本の海外投資の中の約4割がアセアン地区に投資をしているんです。だから日本にとっても非常に重要な場所なんですよね。だから今回は世界にとっても、日本にとっても重要な地域で、意味のある話し合いが行われる、その機会を失ったというのはね、残念ですよね。」

(この報道と報道ステーションとの比較)
アセアン会議の中止は、村尾キャスターのコメントで、「意味のある話し合いの機会を失った」という点にとどめている。

不法滞在で国外退去を命じられたフィリピン人のカルデロン夫妻が13歳の娘、のり子さんを残し、帰国。これまでの経緯をナレーションで説明。家族が支援者や地元の人に感謝を込めたカードを配る様子など、昨日、今日の家族の様子とインタビュー映像。「森法務大臣は、両親の一時的な入国許可も検討している」と結んだ。

(この報道の報道ステーションとの比較)
まず、スタジオでのコメントがなく、ことさらカルデロン夫妻を「悲劇の家族」として取り上げていない。さらに「森法務大臣は、両親の一時的な入国許可も検討している」としており、報道ステーションとは正反対の見方をしていることが明らか。

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